英国イートン・サマースクール 体験記

7月22日から8月6日までの約2週間、高等科2年生30名でイートン・カレッジのサマースクールに参加しました。出発前夜は、親元を離れる不安と、知らない世界へ飛び出す前の胸の高鳴りが混在して、あまり眠れなかったほどです。羽田空港を発ち、待ちに待ったイギリスのヒースロー空港に降り立った時、日本とは違う少し甘い異国の匂いに驚きました。目に入る広告、耳にする言葉すべてが英語だと気づき、「ついにイギリスに来たのだ」という高揚感と同時に、異国の地でやっていけるだろうかという一抹の不安を覚えたことを今でも鮮明に思い出します。しかし、バスに乗ってイートンに到着し、何百年もの歴史を感じさせる煉瓦造りの校舎が連なる壮大な景色を目にした瞬間、不安は希望へと変わりました。車窓から見えた、羊がのどかに草を食む牧草地のあの美しい光景を、私は生涯忘れないでしょう。
イートンでの日々は、朝のミーティングから始まります。その日のスケジュールや注意事項はすべて英語で伝えられ、朝から晩まで英語に囲まれた毎日です。午前中は3コマの授業と、観光地についてのレクチャーを受けました。午後は自由時間で、校内を散策したり、スポーツを楽しんだりしました。
サマースクールで最も重要だと感じたのは、失敗を恐れずに勇気を持つことでした。最初は完璧な英語を話そうと、頭の中で何度もシミュレーションを繰り返していました。しかし、実際の会話は、台本を読むように進むものではありません。ぶっつけ本番で言葉を紡ぐ場面が数えきれないほどありました。最初はうまく伝わらなくても、なんとか会話を続け、自分の気持ちが伝わった時の喜びはひとしおでした。その時は、チューターの先生とハイタッチを交わして喜びを分かち合ったことを覚えています。
授業では、文法やスピーキングに加え、イギリスの文化や伝統についても深く学びました。特に印象的だったのは、大英博物館についての授業です。近年問題となっている展示品の返還問題について、返還すべきか否かを英語で議論しました。高等科の世界史の授業でも同じテーマでディベートを経験しましたが、自分の意見を英語で論理的に組み立てて話すことは、非常に勇気のいる挑戦でした。初めは先生に促されても遠慮がちだった私たちですが、次第に「もっと学びたい」という気持ちが芽生え、最後には先生に驚かれるほど白熱し、授業時間ギリギリまで議論を交わすほどになりました。
これは、「英国の獅子」と称された英国首相チャーチルの言葉です。
"Courage is what it takes to stand up and speak; courage is also what it takes to sit down and listen.(勇気とは、立ち上がって発言することであり、座って耳を傾けることでもある。)"
この言葉の通り、授業に積極的に耳を傾け、勇気を出して発言しあうことが、より良い学びを築くことにつながりました。授業での学びを胸に、実際に大英博物館を訪れ、展示品を目の当たりにした時の胸の高鳴りは忘れられません。展示物を自分の目で見て、英語の説明を読み、先生の解説を聞き、そして自らの言葉で議論する、この一連の学びの集大成は、イートンだからこそ得られた貴重な経験だと強く感じました。
大英博物館の他にも、ロンドンでのショッピングや、華麗なウィンザー城の見学に出かけました。長時間のバス移動で乗り物酔いをする生徒が多かったのですが、酔いにくい席を譲り合ったり、ストーンヘンジの澄み切った空気に癒されたりしながら、皆で協力して乗り越えました。
この2週間で得たものは、英語力だけではありません。同じ環境で寝食を共にし、困難を乗り越えたからこそ、友人たちとの強い絆やお互いを思いやる心、そして予期せぬ出来事にも対応できる力が育まれたと感じています。最終日のディナーでは、コースディレクターの先生がドイツでの留学経験や「一期一会」の出会いの大切さについて温かいスピーチをしてくださいました。馴染みの薄い硬水を一緒に買いに行ったり、シャワーの順番を決めたり、日常会話を英語で話してみたりと、ささいな挑戦を友人と分かち合った日々は、笑い声が絶えず、何にも代えがたい宝物です。あっという間に過ぎ去った2週間を振り返り、帰国の途につく飛行機の中では、自然と涙が溢れてきました。
授業で学ぶだけでは得られない「生きた英語」に触れ、聞いて、話す楽しさを知ったことで、英語がさらに好きになりました。苦手意識があった私が、帰りの飛行機の中で早速、さらなる英語学習を始めたほどです。
このかけがえのない経験を与えてくださったイートンの先生方、そして引率の先生方、日々の生活を支えてくださったスタッフの皆様、旅の手配をしてくださった日新航空の皆様、安全に私たちを送り届けてくださった運転手の皆様、短期間で親しくなれた他校の生徒の皆さん、そして、いつもそばにいてくれた学習院の仲間たち、すべての方々に心からの感謝を申し上げ、イートン体験記を締めくくります。

(高2生徒)

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